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  • 2019.12.22 Sunday
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2012年末から急速に円安が進んだことを受け、私は「旅行業界は、円安で海外旅行客が減って、業績が悪化したのではないか」という仮説を持っていました。ところが実際は、主要旅行会社の旅行取扱額は昨年春以降、増え続けていたのです。
旅行業が好調である背景には、いくつかの理由があります。今回は、旅行業界全体の動向に加え、海外旅行大手のエイチ・アイ・エス(以下、HIS)と業界2位のKNT-CTホールディングス(以下KNT、通称は近畿日本ツーリスト)の財務内容を分析します。そのうえで、旅行業の先行きを見極めるポイントについて解説していきます。
■ 旅行取扱額は国内外とも好調、外国人観光客も増加

観光庁が主要旅行業者57社の旅行の取扱額を集計した「旅行取扱高」(下表)を見ますと、2013年5月から増え続けています。私はこの統計を見る前、円安が進んだことで、日本から海外に出て行く旅行者(アウトバウンド)が減り、旅行業の業績は悪化しているのではないか、という仮説を持っていました。実際は、どうだったのでしょうか。もう少し詳しいデータを見てみましょう。

観光庁が発表した2013年12月の「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、海外旅行の取扱額は、前年同月比107.2%、外国人旅行は同比104.0%、国内旅行は同比108.2%と、いずれも増えているのです。 ただし、募集型企画旅行の取扱状況を見ますと、確かに取扱高はいずれも前年同月より増えていますが、取扱人数という点では、海外旅行が前年同月比98.8%と若干減少しています。

 その一方で、外国人旅行は、取扱高自体は少ないものの、取扱人数が同比142.0%まで増加しているのです。

 以上のことから、円安の影響で外国人観光客が急増したわけですが、取扱高は微増となりました。一方、日本から国外への海外旅行者は微減しましたが、取扱額自体は少し増えたというわけです。

もうひとつ、注意点があります。2012年末からの1年間で20%近く円安ドル高が進んだにもかかわらず、海外旅行者は微減にとどまったということです。

■ 海外旅行があまり減らない2つの理由とは? 

 この理由は、2つあると考えられます。ひとつは、現在、団塊世代の定年退職者数がピークを迎えつつあるということです。そこで、「退職金をもらったから、健康で動けるうちに旅行に行こう」と考える人が増えていると思われます。

 もうひとつは、景気回復や、株高や不動産価格の上昇により資産額が増えて、消費が促される資産効果の好影響が出ているのではないかと考えられることです。ちなみに、旅行業に関しては、消費税増税前の駆け込み需要はほとんどありません。旅行は買いだめることができないからです。ただし、料金が安いうちに行っておこうというインセンティブは少し働いた可能性はあります。いずれにしても、4月以降は消費税率上げもあり、給与が上がらない限りは、消費が減ると考えられますから、旅行にどのような影響が出るかは興味深いところです。

 また、円安や団塊世代の退職という2つの要因は、国内旅行の取扱高・取扱人数をも押し上げました。

 以上が旅行業の現状です。では、実際のところ、旅行各社の業績はどのように推移しているのでしょうか。HISとKNTの決算内容を分析してみましょう。

■ HIS、KNTとも、業績は好調

 まずはHISの平成26年10月期 第1四半期決算(2013年11月〜2014年1月)から見ていきます。HISは海外・国内旅行ともに取り扱う総合旅行会社ですが、国外への格安航空券の販売や海外パッケージツアーなどの商品を主力としていることから、海外旅行の取り扱いは業界1位となっています。ですから、円安が進んだことでどれだけ海外旅行取扱額に影響が出たか、わかりやすいのではないかと思います。

損益計算書(7ページ)から収益を調べますと、売上高は1083億円から1223億円まで12.9%伸びています。ただ、円安の影響などから、売上原価は878億円から989億円まで12.7%増え、営業利益は32億円から40億円までの増加となりました。

もう少し詳しく見てみましょう。2013年12月単月の「主要旅行業者の旅行取扱状況速報(NO.1参照)」の「各社別内訳」によりますと、HISの海外旅行の取扱額は前年同月比116.4%。外国人旅行の取扱額は、同比259.0%。国内旅行は同比128.5%。全体で同比117.8%となりました。やはり円安の好影響から、外国人旅行の取扱額が、規模自体はそれほど大きくないものの、大幅に増えていることがわかります。また、国内旅行が大きく伸びていることにも注目です。HISは順調に業績を伸ばしていると言えるでしょう。次に、KNTの業績も見てみましょう。同じ資料にある「KNT-CTホールディングス(9社計、NO.2参照)」を見ますと、2013年12月単月では、海外旅行が前年同月比100.7%、外国人旅行が同比129.3%、国内旅行が同比107.3%。そして合計が同比105.7%と、HISほどではないものの、いずれも伸びていることがわかります。ちなみに、KNTを旅行部門に連結した近畿日本鉄道の平成26年3月期 第3四半期決算(2013年4〜12月)のセグメント情報(3ページ)を見ますと、「ホテル・レジャー」のうち「旅行業」の営業収益(売上高)は3261億円(前年同期比174.2%)と大幅に伸びています。 以上のことから、大手旅行会社2社の業績は、伸び率に少し差があるものの、旅行業全体の動きと同じく好調だと言えます。

■ 旅行業の見通しを見極める、4つのポイント

 このように、旅行業は今のところ好業績を維持していますが、今後はどのように推移していくのでしょうか。見極めのポイントは、大きく分けて4つあります。

第1に、中国の経済と反日感情の動向です。日本政府観光局(JNTO)が発表している「国・地域別 訪日観光客数(暫定値)」の2013年12月のデータを見ますと、外国からの観光客のうち、アジアが全体の約80%を占めており、その中でも中国からの観光客数が前年同月比185.3%増と大幅に増加していることがわかります。 これは、中国の富裕層が増えていることに加え、2012年の尖閣国有化に伴う反日デモでピークに達した反日感情が民間のレベルでは落ち着いてきたことが、大きな理由だと考えられます。

 逆に言いますと、今後、中国景気が悪化したり、尖閣諸島の問題が再燃して反日感情が高まることがあれば、日本の旅行業は大きなダメージを受けるおそれがあるということです。今は中国のシャドーバンキング問題もくすぶっていますから、こちらのニュースも併せて注意することが大切です。ただ、私は、中国の景気は、短期的には維持されるのではないかと考えています。

第2に、円相場の動向です。円安が進むほど、中国のみならず欧米や東南アジアからの観光客が増えると期待できます。たとえば、ドル/円レートは2012年末から1年間で約20%も円安が進みましたが、これは米国人からみると、日本での宿泊費や交通費がそれだけ安くなったということです。この影響は非常に大きいでしょう。

 ドル/円相場は、今年に入ってから現在(4月22日現在)にかけて、ほぼ1ドル=101〜104円台で推移していますが、今後はどこまで円安が進むのか。この点が注目ポイントとなります。私は、中長期的には、シェール革命によって米国の貿易収支が改善し、さらには、エネルギーコストが下がることなどから、米国経済のファンダメンタルズ(基礎力)が改善し、円安ドル高が進むのではないかと予測しています。

第3に、欧米景気の動向です。先ほども触れた「国・地域別 訪日観光客数(暫定値)」を見ますと、アジアだけでなく、欧州や米国からの観光客も少なくはないですから、欧米の景気にも注意を払うことが大切です。 今のところ、米国経済は堅調に推移しており、欧州経済も小康状態となっていますので、世界経済は少しずつ回復に向かいつつあると言えます。ただし、ウクライナ情勢などの火種がありますし、ギリシャ危機に端を発した欧州債務問題も根本的に解決したわけではありませんから、油断はできません。

 第4に、日本国内の景気、特に、アベノミクス効果がいつまで続くのかという点です。正直なところ、私は、アベノミクスはすでに息切れしつつあるのではないかと感じています。

 昨年4月以降、異次元緩和によってマネタリーベース(日銀券と日銀当座預金残高の合計)が急速に増え続けています。こうして増えたおカネが企業や個人に貸し出されなければ、景気はよくならないわけですが、肝心の「銀行計貸出残高」や「M3(現金通貨と民間金融機関の預金の合計)」の増え方が鈍化し始めているのです。

 アベノミクスが本格的にスタートしてから1年が経過しましたが、この間、異次元緩和によって円安が進み、それが株価の上昇をもたらしたことで景気が回復してきました。ところが、今年に入ってから株価の伸びは止まってしまい、2014年4月11日には、日経平均株価は1万4000円を割り込んでしまいました。これは2013年12月に付けた直近の最高値(終値ベース)である1万6291円よりも2割近くも下げたことになります。

 以上の点から、私はアベノミクス効果が薄れ始めたのではないかと感じるのです。そのうえ、4月から消費税率が引き上げられましたから、このままでは、国内景気を牽引してきた資産効果がしぼんでいくのではないかと危惧しています。

先ほど見ました「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、全体の取扱額のうち、60%強が国内旅行で占められますから、国内景気の動向は旅行業に大きく影響しますし、逆に国内の観光地などの景気に大きな影響を与えます。 以上の4点と併せて、旅行会社の決算に着目するとよいでしょう。

エイチ・アイ・エスと、近ツーを分析する

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